もう隠していられませんっ!

「あ,の……っ」



勇気を出し絞り出す聞いてという主張。

七月くんは手をそのままに



「ん?」



と私を見た。

ゆったりとした性格の七月くんには,その1音1音にきゅんとしてしまう。



「あ,ごめん」



髪が崩れるのを気にしたと思ったのか,その手は私の髪を整えるように撫で付け,引いていく。

でも七月くん,ちょっと待って。

私はその右手をきゅっと掴み止めて,七月くんを見上げた。



「っ? りん」



りんなのりん。

透き通るような響きが,七月くんからだと倍嬉しい。

私の耳には,身動きを予告無く奪われた七月くんの戸惑いが届いていた。



「あの,私。ずっと隠してることがあって」



落ち着いて少しずつ話せば,意図せず神妙な雰囲気を作り出してしまう。

七月くんの不安そうな顔に,私はぎゅっと目をつむる。

大丈夫だよ,七月くん。

2秒後にその顔をしてるのは,多分,私。
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