ヤンキーくんは意外に甘い

4話

○バイト先のカフェ/店内

【バイト先に不動くんが来た……!】

きょろきょろとしながら入ってくる丈。困惑する花梨
玉井「珍しいお客さんだね」
花梨「わ、私行きます!」
玉井「あっ……」
花梨はすぐに丈を案内に向かう
花梨「いらっしゃいませ。1名様でしょうか?」
丈「あ……はい」
花梨「ご案内いたします」
窓際のテーブルに案内して、水とメニューを出す花梨。周囲は女性の客ばかりで丈は浮いていた。
花梨「どうしてこのカフェに来たの?」
(私のバイト先は話してない。もしかして私がいない時に来てたりしたのかな)
丈「……メニューが気になって」

【確かにうちのカフェはケーキが売り】【だから私もこのカフェでバイトを決めたくらいだし、甘党の不動くんが来てもおかしくはない】

(けど…偶然にしてはできすぎてる)
花梨「オススメはチーズスフレだよ」
丈「じゃあそれとアイスコーヒー」
花梨「承知いたしました。少々お待ちください」
厨房のほうへ戻る花梨
玉井「知り合い?」
花梨「あ……クラスの男子です」
玉井「そうなんだ。怖そうな男の子だけど、絡まれたりしなかった?」
花梨「は、はい、大丈夫です! オーダーはチーズスフレとアイスコーヒーでーす」
玉井「……了解」
玉井は不思議そうにしながらもオーダーを用意し始める

オーダーの品を丈に運ぶ花梨
花梨「お待たせいたしました。チーズスフレとアイスコーヒーです」
丈「ありがと」
テーブルの上にスフレとコーヒーを置き、すぐに戻る
玉井「ヤンキーとケーキ……似合わないな」
花梨「はは……」
(私も昨日までだったらそう思ってた)(でも昨日のクレープを食べる顔とかを見てたら、甘いものを食べる不動くんをもっと見たくなった)
玉井「あの男子とはよく話すの?」
花梨「ま、まさか。全然話さないですよ。私友だち少ないですし」
玉井「……そうなんだ」
(それも、昨日までは、だけど……)
遠くからケーキを食べる丈を眺める花梨

○カフェ外/夜八時
花梨「おつかれさまでした~」
お店を出ると、店の前で丈が待っていた
丈「え、不動くん!? こんなところでどうしたの?」
きょろきょろしながら丈に駆け寄る花梨
丈「待ってた」
花梨「何か用あった?」
丈「……いや。彼氏が彼女のこと迎えに行くのは当たり前だろ」
花梨「そ、そういうこと……」
(なんか恥ずかしくなってくるくらい、気にしてくれてる)
丈「帰ろう」
花梨「う、うん」
自然と手をとられ、手をつなぎながら歩く。照れる花梨
丈「……また家に来いよ。メニュー制覇するんだろ?」
花梨「いいの?」
丈「もちろん」
花梨「じゃあバイトのない日……明日行きたい!」
丈「わかった。言っとく」
花梨「あ、でもちゃんと並んでみたいな」
丈「……物好きだな」
丈が小さく笑う。その優しい笑顔にドキッとする花梨
(…みんなが不動くんのこと怖いって言うたびに)(こういう不動くんを知ってるのは私だけなんだと思うと)(なんか……うれしいな)


○翌日放課後/プティ・アマンチ店内
今日は店内のカウンター(一番端)に二人並んで座っている。店内のテーブルは女性ばかり
花梨「あ~~しあわせ!」
丈「ほんとうまそうに食うな」
花梨「だって本当においしいんだもん!」
丈「並んで腹減ってるからじゃねえか?」
花梨「まさか!」
カウンターの奥から丈の母が顔を出す
丈の母「丈が店の中で食べるなんてめずらしいわね」
丈「だってこいつが客として食べたいって言うから」
丈の母「あら優しいのねえ」
にやにやする丈の母
丈の母「花梨ちゃん、カフェをやるのが夢なんだって?」
花梨「え! 不動くん話しちゃったの?」
丈「だめだったか?」
花梨「だって、プロの人相手に恥ずかしいよ……」
丈の母「そんなことないわよ。若いのに目標があるのは立派よ。ノートにも書き留めてるんでしょう?」
花梨「は、はい。一応……」
花梨は顔を赤くして俯く
丈の母「それでね、うちの店の新メニュー考案してみない?」
花梨「……え、いいんですか?」
パッと顔を上げる花梨
丈の母「審査は厳しいけど最近マンネリだし、新商品出したいって考えてたのよ。新しい風を入れたいと思ってたし、」
花梨「でも、できるかな……」
丈の母「もちろん、花梨ちゃんのアイディアをどうよくしていったらいいかとか考えるのも楽しいわよ」

【確かに、今までしたことのない経験】【しかもプロの人に見てもらえるなんてこんなチャンスはない!】

花梨「……やらせてください!」
丈の母「うん。よろしくね」
花梨「ありがとうございます!」
(憧れのお店のメニューを考えられるなんて、夢みたい……!)
隣で優しい顔をして見守る丈

○駅前/夕方
駅について別れ際
花梨「今日も送ってくれてありがとう」
丈「いや。……あのさ、次の日曜あいてるか?」
丈は少し照れて目が泳ぎがち
花梨「え?」
丈「出かけ、ないか」
花梨「……う、うん。わかった」
丈「……よかった。じゃあな。気をつけて」
手を振って改札に入る花梨。
電車に乗ってほっと息をつくも、ハッとする
(あれ? もしかしてこれって、デートってこと!?)(ど、どうしよう……!)
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