ヤンキーくんは意外に甘い

5話

○駅前/日曜日お昼
(ちょっとはやく着いちゃった…)
いつもよりオシャレをして緊張気味に待ち合わせ場所についた花梨。
十分前だったが、駅前にはすでに丈の姿があった。
(え、不動くんもう来てる…!)
慌てて走り寄る花梨
花梨「不動くんお待たせ、待った?」
丈「いや。今来た」
丈の私服姿を眺める花梨。ジーンズに黒のTシャツとラフだけど、背が高いからサマになっている
花梨「今日はどこに行くの?」
丈「……」
花梨を見たまま固まっている
花梨「どうしたの?」
口元に手を当てて照れている丈
丈「いや……可愛いな」
花梨「っ!」
顔を真っ赤にする花梨
花梨「あ、ありがとう……不動くんもいつもと違って、かっこいいっていうか、その……」
照れる二人
(こんなの、恥ずかしすぎるよ……!)
花梨「そ、それで今日はどこに行くんだっけ!」
丈「……ああ、新メニュー考案のためにいろんなカフェに行こうと思うんだけど」
花梨「えっ、それ最高……!」
(そんなことまで考えてくれてたんだ!)
丈「よかった。じゃあさっそく、行くぞ」
花梨「うん……!」
気合いを入れて歩き出す二人

○ショッピング街
若者で賑わっている街。人がひしめきあっている
花梨「人、すごいね……」
丈「ああ。日曜だしな」
(人、多過ぎ…!)
人混みに揉まれ、どんどん先へ行ってしまう丈の背中に手を伸ばす
花梨「あ、ふ、不動くんっ!」
振り返った丈は焦った顔をして花梨のほうへ戻ってきてくれる
丈「……悪い。また早足になってた。なんかあったら手引っ張って」
手をつかまれ、ぎゅっと握る
花梨「……うん、わかった」
手をつないで歩く二人。周囲にも同じように手を繋いであるいているカップルがたくさんいる
(こんなの、どこからどう見ても恋人同士だ……)
【こんなことしてていいのかな】【はやく誤解を解かないといけないんじゃ……】
丈「ついた、ここ」
カフェの前に到着し、
花梨「ここ、有名なパンケーキ屋さん!」
花梨が驚いていると丈はにやりと笑う。
丈「行くぞ」
ドアを開けて中に入る

その後、いろんなカフェに入り食べまくる二人。でも花梨は必死にメモを取る。その他にも買い物などをして普通のデートを楽しむ二人。
【あんなに緊張してたデートが】【こんなに楽しいなんて思わなかった】【今までずっと一人だったからかな】【大好きなスイーツを誰かと共有できるのが楽しくてうれしい】

○ショッピング街
三軒目のカフェを出る二人
花梨「あ~もうお腹いっぱい!」
丈「ちょっと休むか」
花梨「そうしよう!」
歩いていると、人ゴミにイライラしている不良二人(高校生)が正面から向かってくる。それに気付いた丈は花梨を守るように歩く。
けれどすれ違うと同時にイチャモンをつけられてしまう
不良A「おいてめぇ、今こっち見てたよなぁ?」
丈「……見てない」
ため息を吐く丈
花梨「……ふ、不動くん」
怯える花梨を自分の身体で隠す丈
丈「花梨、ちょっと離れてろ」
(大変……っ!)
花梨は丈から離れ、大人を呼ぶために走り去る
不良B「なんだぁ? 女がいるからってかっこつけやがって!」
不良Bに胸ぐらを掴まれる丈。けれど微動だにしない。
丈「やれるもんならやってみろ。
堂々とした丈に不良Aが怯え始める
不良A「な、なんかこいつ強そうっすよ」
不良B「はぁ!? びびってんじゃねえぞ!」
握り拳を作り、丈を殴ろうとする
花梨「お、おまわりさん……!」
丈の顔面目の前で拳がとまった。
声を上げたのは花梨で、近くの交番で警察を呼んできた。花梨と一緒に走ってくる警察二人
花梨「こっちです!」
警察「こら! 何やってる!」
不良A「やべ」
不良B「チッ」
不良A「おめーもオレらと同じだかんな!」
逃げるように去っていく不良たちを警察が追いかけていく。
花梨「不動くん、大丈夫!?」
丈「……花梨」
花梨「よかったぁ……」
丈の顔に傷がないことにほっとするも、手が震えている花梨。その手を丈の大きな手で包む。
丈「……花梨悪かった。ありがとな」
花梨「ううん。不動くんが謝ることないよ。無事でよかった」
丈「……」
花梨を抱きしめる丈
花梨「ふ、不動くん! ちょっと!」
丈は黙ったまま花梨を抱きしめて動かない。顔真っ赤の花梨。周囲の人は微笑ましく二人を見ながら通り過ぎていく
花梨「ひ、人が見てるからー!」


○海の見える公園/夕方
海を見ながら手を繋ぎ歩く二人。周囲はカップルだらけ
丈「あんなところ見せて悪かった。怖かっただろ?」
花梨「そんなことないよ。だって不動くんは手を出したりしなかったでしょ?」
丈「……ああ、そうだけど……よく勘違いされるから」
花梨「……不良、とか?」
丈「ああ」
(私も不動くんと話す前はそういう人なんだろうなって思ってた)
ベンチに座る二人
丈「ケンカ売られることは多かったからさっきみたいい威嚇して回避してた」「それでも殴られることあったら、俺もやり返してた」
花梨「……そっか」
丈「でも一回勝つとどっから聞いたのか次々と俺を狙ってくるヤツとかもいてさ」「しかたないと思ってたけどさっきあいつらに『同じだ』って言われて悔しかった」
花梨「不動くんはあんな人たちと一緒じゃないよ」
(不動くんと話すようになって数日しか経ってないけど)(たとえケンカをしてたとしても、優しいところを知ってる)
花梨「私は不動くんが優しい人だってことは知ってるよ。…それに、すごい甘党だってことも」
笑うと、丈はぽかんとしている
花梨「あ、ごめ……」
変なこと言ったかと照れ笑いを浮かべる花梨
丈「花梨ありがとな。これからは売られたケンカも買わない」
花梨「うん。それより甘いものたくさん食べに行こうよ」
丈「……俺」
花梨「?」
丈「俺、そんなんだったし、彼女とかいたことないから、気付かないことも多いと思う。だから何かあったら言ってほしい」「花梨の彼氏としてできることならなんでもする」
(そんな風に思ってくれてるなんて)(私にはもったいないくらいなのに)
花梨「……うん、私も同じだよ。誰かと付き合ったことなんてないから、教えて欲しい」
(誤解を解かなきゃいけないのに、私何言ってるんだろう…)
丈「じゃあ俺、言いたいことある」
胸が高鳴る花梨
花梨「な、なに?」
丈「……今すごいキスしたい」
花梨「えっ」
(キスって、あの、恋人同士がするキス……?)
丈「だめか?」
真剣な顔で少し顔を赤くさせた丈と見つめ合う。
花梨「……だめじゃ、ない」
(なんで?)(口が勝手に……!)
ゆっくり顔が近づいてきて、間近で見つめ合う二人。そのまま唇がふれるとまたゆっくりと顔が離れていき、丈の鋭い瞳と目が合いドキドキが止まらない花梨。二人とも顔を赤くしている
丈「……花梨」
手をぎゅっと強く握られ、ぎゅっと胸を締め付けられる花梨

(はやく誤解を解かなくちゃいけないのに)
(不動くんと本当のキス、しちゃった……)

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