モノクロの僕と、色づく夏休み
第一章

第1話「夏休み恒例行事」

 どの季節も別に好きじゃないけど、夏は特に大嫌いだ。

 紫外線バリバリの、あの焼けるような太陽光線、体にまとわり付くムワッとした熱気、息苦しさ。
 蜃気楼で目の前はゆがむし、オレの視界をますます悪くする。

 ただ、そんなことを考えたって、どうしようもない。悲嘆(ひたん)したって変わることはない。 
 
 これから先、過ごしにくくなることはあっても、きっと好転することはない。

 毎日、毎週、毎月、毎季節、毎年、大した違いもなく過ぎて行くだろう。

 同じ時間に通学して、同じ時間に昼食を食べ、同じ時間に下校する。
 きっとこれから先も、同じようなことを繰り返しながら、生きて行くんだ。

 ずっと、そう思っていた。

 だから……本当は夏のことなんて、どうでもいいんだけどね。
 ただ別の季節よりも、さらに憂鬱(ゆううつ)になるだけのこと。


 ああ、そうだ。

 憂鬱さに、拍車を掛ける行事があるんだった。

 夏のイベントの一つお盆。そして親の帰省に付き合わされる。うんざり。

 親が帰省する祖父母の家は、すごい田舎で、なんと今時クーラーもないし、自然が豊かなんて言えば聞こえはいいけど、周りにはコンビニ一つないし、薮蚊だらけ、虫だらけで最悪。

 行く度に蚊に体を二十箇所以上刺されて、痒いことこの上ない。

 遊べるところもなくて、退屈で……こんなことなら、クーラーのキンキンに効いた快適な家で、ゲームでもして、のんびり過ごしたいと毎年思っていた。

 そして今年も、例年通りそう思っているわけだが、親の意向じゃ仕方ない。全然一人で家に残ってもオレは構わないのに。でも、祖父母たちが会いたがってるのにと言われると、「面倒くさい」と面と向かってハッキリ言えなかった。

 養って貰っている身はつらい。

 だからって別に、早く大人になりたいとも思わない。

 だって大人も、色々面倒くさそうだしさ……。

 そんなわけで今年もいつも通り、世間で言うところの里帰り。

 ただ、いつもと少し違っていたところは、両親の仕事の都合で、オレだけ少し早めに、祖父母の家に行くことになったこと。

 もう小六だし、何も外国へ行くわけでもないし、陸続きだし、電車に乗り継げばいいだけの話しだし、一人の方が気楽だし……こうしてオレは、祖父母の家目指して一人電車に乗り込んだ。

 この時オレは、今日という日があんなことになるなんて、微塵も思っていなかった――


つづく
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