モノクロの僕と、色づく夏休み
第10話「リュックの中身」
デカリュックの中身――
さっき持っていた地図の他に、あるわあるわ……コンパス、サバイバルナイフ、雨具、軍手、防寒具、日焼け止め、サングラス、バンドエイド……携帯酸素なんてものまであった。
しばらく思考が停止してしまったが、オレは再び我に返ると、食べられるものを探した。
缶詰まであったが、オレは固形食糧を頂くことにした。
このデカリュックが、未来から来たネコ型ロボットのポケットさながらに思えて、オレは食べながら、リュックの中をさらに物色した。
他にも色々入っていたが、オレはリュックの右側のポケットの中身を見て、動きが止まってしまった。
「……」
さっき左のポケットにも入っていたが、右にもさらにたくさんの、錠剤やらカプセルやらの、薬らしきものが入っていた。
オレは何だか見てはいけないものを見た気がして、それ以上リュックに触る気になれなくなってしまった。
オレは再び少年とリュックを背負うと、山の中を歩き出した。
***
歩きながら、オレは背中にいる少年のことを考えていた。
おそらく、持病がある子供なんだ。
それが何でこんな無茶を……?
病気のことはよく分らないけど、こういう病人ってもっと……弱々しくて、頼りなくて、儚げなものじゃないのか?
こいつの、鬼気迫るような気の強さは何なんだろう?
いったいこいつは、こんな山で何がしたかったんだろう?
考えごとをしていたせいで、オレは足を滑べらせてしまった。
背中の少年を落っことしはしなかったが、木に肩をしたたかに打ちつけた。
「……痛ってー!」
「……うっ」
自分とは違う声が耳に入り、オレは後ろを振り返った。
「気がついたか⁉︎」
「ここは……?」
「まだ山だけど……もうすぐ麓に出られはず!」
「……」
「月も明るいし、視界もいいしさ、きっと大丈夫だよ!」
「……」
「それより、お前、具合大丈夫か?」
「……ずっと……おぶって来たの?」
「え? ああ……うん」
「そう……」
少年はそう呟いて、少しの間空を見上げていたが、再びオレの背中に顔を埋めて、それからはもう何も言わなかった。
少年の声が聞けて安心したのは、つかの間だった。
しばらくすると、少年の具合はまた悪くなり、途中で薬を投与したが、発作は治まらず、オレは今まで生きてきた中で多分、一番がむしゃらに足を動かして限界まで走った。
どう降ったか覚えてないが、オレは何とか無事下山し、道路に出て車をつかまえることが出来た。
その後、一番近い病院にあいつを搬送してもらった。
ただオレの脳裏にはっきり焼きついているのは、担架に乗せられたあいつの腕が、今にも折れそうなほど細くて白かったことだ。
オレはそれを見て、泣きそうになってしまった。
つづく
さっき持っていた地図の他に、あるわあるわ……コンパス、サバイバルナイフ、雨具、軍手、防寒具、日焼け止め、サングラス、バンドエイド……携帯酸素なんてものまであった。
しばらく思考が停止してしまったが、オレは再び我に返ると、食べられるものを探した。
缶詰まであったが、オレは固形食糧を頂くことにした。
このデカリュックが、未来から来たネコ型ロボットのポケットさながらに思えて、オレは食べながら、リュックの中をさらに物色した。
他にも色々入っていたが、オレはリュックの右側のポケットの中身を見て、動きが止まってしまった。
「……」
さっき左のポケットにも入っていたが、右にもさらにたくさんの、錠剤やらカプセルやらの、薬らしきものが入っていた。
オレは何だか見てはいけないものを見た気がして、それ以上リュックに触る気になれなくなってしまった。
オレは再び少年とリュックを背負うと、山の中を歩き出した。
***
歩きながら、オレは背中にいる少年のことを考えていた。
おそらく、持病がある子供なんだ。
それが何でこんな無茶を……?
病気のことはよく分らないけど、こういう病人ってもっと……弱々しくて、頼りなくて、儚げなものじゃないのか?
こいつの、鬼気迫るような気の強さは何なんだろう?
いったいこいつは、こんな山で何がしたかったんだろう?
考えごとをしていたせいで、オレは足を滑べらせてしまった。
背中の少年を落っことしはしなかったが、木に肩をしたたかに打ちつけた。
「……痛ってー!」
「……うっ」
自分とは違う声が耳に入り、オレは後ろを振り返った。
「気がついたか⁉︎」
「ここは……?」
「まだ山だけど……もうすぐ麓に出られはず!」
「……」
「月も明るいし、視界もいいしさ、きっと大丈夫だよ!」
「……」
「それより、お前、具合大丈夫か?」
「……ずっと……おぶって来たの?」
「え? ああ……うん」
「そう……」
少年はそう呟いて、少しの間空を見上げていたが、再びオレの背中に顔を埋めて、それからはもう何も言わなかった。
少年の声が聞けて安心したのは、つかの間だった。
しばらくすると、少年の具合はまた悪くなり、途中で薬を投与したが、発作は治まらず、オレは今まで生きてきた中で多分、一番がむしゃらに足を動かして限界まで走った。
どう降ったか覚えてないが、オレは何とか無事下山し、道路に出て車をつかまえることが出来た。
その後、一番近い病院にあいつを搬送してもらった。
ただオレの脳裏にはっきり焼きついているのは、担架に乗せられたあいつの腕が、今にも折れそうなほど細くて白かったことだ。
オレはそれを見て、泣きそうになってしまった。
つづく