つぼみの初恋。
私の声が震えるように宏光の声も震えていた。

(・・・あ)

唐突にさっき聞いた男子の会話を思い出した。

「それより早く花梨のとこ行きなよ」
「え、何で今?」
「私聞いたんだよねー。浅野くん?っていう2組の人が花梨に告るって言ってたの」

わざとすっとぼける様に言うと宏光がびくりと反応した。

(あぁ本当に好きなんだね)

それでも私は煽る。

「先越されちゃうかもね?いいの?」

宏光の顔を覗き込むと、苦しそうに顔を歪めていた。

「というか私に悪いだの勝手に罪悪感抱いて鬱々しているよりさっさとくっついて欲しいんだよね。そっちの方がスッキリする」
「お前なぁ」
「何?」

呆れた宏光にイタズラっ子のような笑顔を返す。

2人がくっついて仲良くしている場面なんて見たくない。でもそれ以上に宏光が落ち込む姿を見たくない。

私の気持ちが伝わったのか宏光はかすかに笑った。

「・・・いや、ありがとな」
「どーいたしまして」

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