お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
プロローグ
一度もオリヴィアを見てくれなかった『夫』と共に、オリヴィアは広間に足を踏み入れた。
(いよいよ、今日が来たのね……)
この日のために選んだのは、深紅のドレス。
黒いレースを随所にあしらったそれは、物語の中の悪女が身に着けているもののように見えるかもしれない。
ドレスには金の刺(し)繍(しゅう)が施され、身を飾る宝石は、オリヴィアの目の色と同じ赤いガーネットとダイヤモンドが中心だ。黄金の台座にはめ込まれた宝石がキラキラと輝く。
スカートの裾は、オリヴィアが歩みを進めるのと同時に優雅に揺れた。堂々たる王妃の風格である。
「さあ、陛下。参りましょう」
笑みを浮かべて、『夫』であるグレゴールを中へと誘う。グレゴールは、オリヴィアに目を向けると、口元をゆがめた。
彼との関係が良好だったことなど一度もない。冷えきった夫婦だ。いや、彼と夫婦だったことなど一度もない。オリヴィアは名前だけの王妃なのだ。
――だが、それも今日で終わり。
グレゴールの腕を借りて広間に足を踏み入れると、周囲の視線はグレゴールではなくその隣を歩くオリヴィアに向けられた。
(いよいよ、今日が来たのね……)
この日のために選んだのは、深紅のドレス。
黒いレースを随所にあしらったそれは、物語の中の悪女が身に着けているもののように見えるかもしれない。
ドレスには金の刺(し)繍(しゅう)が施され、身を飾る宝石は、オリヴィアの目の色と同じ赤いガーネットとダイヤモンドが中心だ。黄金の台座にはめ込まれた宝石がキラキラと輝く。
スカートの裾は、オリヴィアが歩みを進めるのと同時に優雅に揺れた。堂々たる王妃の風格である。
「さあ、陛下。参りましょう」
笑みを浮かべて、『夫』であるグレゴールを中へと誘う。グレゴールは、オリヴィアに目を向けると、口元をゆがめた。
彼との関係が良好だったことなど一度もない。冷えきった夫婦だ。いや、彼と夫婦だったことなど一度もない。オリヴィアは名前だけの王妃なのだ。
――だが、それも今日で終わり。
グレゴールの腕を借りて広間に足を踏み入れると、周囲の視線はグレゴールではなくその隣を歩くオリヴィアに向けられた。
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