お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
 愛らしかったオリヴィアは、成長するにしたがって洗練された美貌を持つようになっていった。王女のいない現王家においては、王女に準じる立場とされたほどの高貴な身分。

 そして、その身分を鼻にかけない気安さと、他の者達への気配り。心優しいだけではなく、辺境伯家の一員として、戦いの場に身を投じる覚悟もできていた。

 ――彼女に恋をした男性が、何人いたか、この男はまったく気づいていないのだろうか。

 初恋を諦め、この国に嫁いだ。

 夫となった国王にお飾りの王妃にすると宣言されても、実家にそれを訴えようとはしなかった。

 ――すべては、両国のために。

 なのに、封じたはずの初恋を、この男は無神経にも目の前に引きずり出してきたのだ。細切れにしてやってもまだ足りない。

 マリカのまとう空気が変化したのを、さすがのダミオンも気づいたらしい。いつもは商人らしい愛想のよい笑みを浮かべている彼の顔に、怯えの色が走った。

(まだ、足りない。これだけじゃ、まだ足りないわ……!)

 オリヴィアの心を乱した責任を、どう取らせてやろうか。

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