お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
「私ねぇ……幼い頃、死にかけていたのを、オリヴィア様に救われたの。育ててくれたのは姉さんの家族。そんな命の恩人を苦しめるようなやつ、躾(しつけ)もせずに帰すはずないでしょう?」

 侍女長の時と一緒だ。まずは、徹底的に心を折らねばならない。

 すっと肌にナイフを走らされ、ダミオンは悲鳴をあげた。

「や、やめてくれ! 助けてくれ!」

「あらやだ。切れてないわよ」

 ナイフを身体に押し当て、刃を走らせたのは嘘ではないが、傷ひとつつけていない。

「オリヴィア様の心は、もっと痛かったでしょうね? ねえ、ダミオン。自分がどれだけ無神経だったかあなたわかってる?」

「わ、わかった! わかった! 理解した!」

「まだわかってないわよ、あなた」

 今度は頬にナイフの先を当てた。力の入れ方を間違えたら、すぐにグサッといってしまうだろう。

「あっ……ひぃ……」

「ねえ、ダミオン・ウィナー。あなた、私達を舐めてるの? ただの侍女だと思ってる?」

 無言で首を横に振る。心の方は強くないらしい。これなら、そう難しい話ではない。

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