お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
 なんなのだ、この女は。オリヴィアは眉間に皺(しわ)を寄せそうになるのを懸命にこらえた。

 赤毛の彼女は、どういう立場でここにいるのだろうか。

 グレゴールに半分体重を預けるようにし、彼の頬に指を這(は)わせている。それは、まだ明るいこの時間には、あまりにも淫(いん)靡(び)で、良識ある者なら眉を顰(ひそ)める振る舞いだった。

「ヴェロニカが言うなら……まあ、許してやってもいい」

「そうです。寛大な心をお持ちになるべきです」

 もう一度、グレゴールの頬に指が這わされた。

 くすぐったそうな、照れくさそうな彼の表情。一応妻であるオリヴィアが目の前にいるというのに。

(……ヴェロニカとやらは、陛下の愛人ね。誰が陛下にあてがったのかしら。あとで、エリサに調べてもらいましょう)

 多少笑われるのはかまわないし、目の前でいちゃつかれたところで腹立たしいとも思わないけれど、相手の素性がわからねば身を守ることもできない。

「先生、では行ってきます」

「はい、陛下。会談がうまくいくことを心から祈っていますわ」

 グレゴールの耳元でささやき、ヴェロニカは身を離した。

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