お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
(先生って……なにを教わっているのかしら……)

 先生という言葉とは裏腹に、学んでいるようには見えないのだが。

 対処するにしても、エリサの報告待ちにした方がいい。仏頂面のグレゴールに向かって踏み出しながら、後ろ手でエリサに合図した。

「エリサ、やっぱりマリカひとりでいいわ。あなたは自由にしていて」

「本当ですか? ありがとうございます、オリヴィア様!」

 エリサに休みをやったように周囲の人には思われているかもしれないが、逆である。

 ヴェロニカについて詳細な情報を集めるよう指示を出した。今の合図で、エリサならオリヴィアの意図をくみ取ることができる。

 ヴェロニカから離れ、しぶしぶオリヴィアに腕を差し出したグレゴールの腕を借りて、昼食会の会場へと入る。

 それぞれの席について待っていると、やがて入ってきたのは立派な衣服を身に着けた五十代と思われる男性だった。彼が皇帝である。

 皇帝はもう五十を過ぎようとしているはずだが、そんなことはまったく感じさせない若々しさを持っていた。

< 121 / 306 >

この作品をシェア

pagetop