お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
 幾重にもフリルを重ねた華やかなスカート。身に着ける品は最高級のものばかり――だが、顔と合わせても、グレゴールの目がオリヴィアに向けられることはなかった。

(……ああ、機嫌が悪いわね)

 ヴェロニカの裏切りを知ったグレゴールは、今日はいつも以上に機嫌が悪いようだ。

 今日の夜会でもヴェロニカと顔を合わせるのと、どちらがましなのだろう。

 連れだって会場に入るなり、最低限の義務は果たしたと言わんばかりにグレゴールはオリヴィアから身を離した。

「ここまで連れてきてやったんだから、十分だろう。俺はもう行くぞ」

「……陛下、あの」

「なんだ?」

「私に……できることがありましたら、お声がけください」

 ヴェロニカがいなくなったからと言って、すぐにグレゴールがオリヴィアを見るようにはならないだろう。

 オリヴィアの存在だけ意識しておいてもらえれば――今は、余計なことをしない方がいい。

 グレゴールは、重鎮達のところに行ってしまい、オリヴィアはひとり別のグループへと向かう。歩みを進めるオリヴィアの耳に、聞きたくない言葉が飛び込んでくる。

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