お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
 こちらにダンスを申し込んできた青年の目論見がどこにあるのかわかっていながら笑顔で受け入れる。

 青年のダンスはなかなか巧みで、こちらに来てからはダンスの機会もほとんどないオリヴィアにとっては思いがけず楽しい時間となった。

 それが、相手を増長させたのだろう。休憩に向かった先で事件は起きた。

「陛下に相手をされないのでは寂しいでしょう。どうです?」

「……それは、図々しいのではなくて? 相手が王妃だと知って、あなたはそれを口にしているのかしら」

 なんと彼は、王妃であるオリヴィアを口説きにかかってきたのである。彼とダンスをしている間は楽しかったから、オリヴィアも微笑みを浮かべていた。

 それが相手を誤解させたのだとしても、王妃、つまり人妻に言い寄るだなんて論外だ。たとえ、形だけの王妃だったとしても。

「――相手にされていないくせに」

「あなたは、わかっていないようね。なぜ、私がここにいるのか――ああ、そうそう。ウェーゼルク辺境伯家は、魔術の才にも恵まれているって、あなたご存じ?」

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