お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
 すっと青年からの距離を大きく開け、立てた人差し指の上に炎を生み出す。オリヴィアの笑みに合わせるみたいに、炎が大きくなった。

「いや、し、知らなかった……」

「覚えておいて。私がこの国にいるのは、私がそうする必要があると判断したからよ。陛下を裏切るつもりはないわ」

 炎をまとわせたままの指を男に向ける。それからすっと室内に続く出入口の方を指さした。

「先にお帰りなさい。私は、もう少しここで風にあたっていくから」

 にっこり。

 オリヴィアが満面の笑みを浮かべると、青年は慌てた様子で中に転がり込んでいった。

(……だから、夜会に出るのは面倒なのよね)

 こちらをあざける女性達はまだいい。そんなもの、聞き流せばすむことだから。

 問題は、権力を持っている男の方である。今の青年も有力侯爵家の子息だったはずだ。

(ダンメルス侯爵に、話をしておきましょうね)

 青年がどんな咎(とが)めを受けるのかは知らないけれど、それはオリヴィアの知ったことではない。口説いても問題ないと思わせてしまった点についてだけは反省しておこう。

 

「あら、また来たの?」

「クル?」

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