お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
 気の重い夜会から部屋に戻ってくれば、グレゴールの使い魔である鳩が待っていた。

(ルークの気持ちは嬉しいのだけれど……)

 今日、あんなことがあったからだろうか。ルークが側にいるような気がして、縋(すが)りたくなってしまう。

 足に付けられた包みから手紙を取り出してみれば、託されていたのは小さな紙切れ一枚だった。

「……ルークってば」

 そこに記されていたのは「俺は頑張っている」の一言だけ。オリヴィアの言葉に返事をしたかのように「クルルッ」と鳴いた鳩が頸(くび)を傾げた。

「返事はできないのよ……わかってる?」

 またもや、鳩は首を傾げる。赤い目が、暗い中でも輝いていた。

「でも、すぐにお帰りってわけにはいかないわね。今夜は、私の部屋でおやすみなさい。明日、ご飯を食べてから出発するといいわ」

 ルークは、あの約束を果たそうとしているのだろう。オリヴィアを取り戻すだけの力をつけるという約束を。

「無理はしないでって言えればいいのに……」

 つい、独り言が零れた。

 本当は、こうやってルークの手紙を受け取るのもよくない。

 ――でも。

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