お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
 オリヴィアの表情が変わった。そう思ったのは、ルークの気のせいではないはずだ。

 エーリッヒに死ぬぞと呆れられつつも、使い魔との同調ができるようになって本当によかった。

 ただ、使い魔に手紙を運ばせるだけだったら、オリヴィアの成長を見守ることはできなかっただろうから。

 もう、あれから二年が過ぎている。

 まだ、線の細さを残した少女から、ひとりの大人の女性へと変わってゆくオリヴィア。その姿を、一番近くで見守ることができなかったのは残念だが、使い魔と意識を同調させることができるようになって、幾分ルークの意識も変わってきた。

「あなたの名前も、知らないままだわね」

「クルルッ」

 とできるだけ愛らしく鳴いて、オリヴィアの手に頬を擦り寄せる。

 今は鳩に意識を同調させているから当然なのだが、オリヴィアの手はルークの記憶にあるものよりずっと大きかった。

「ごめんね。ルークに手紙を書くことはできないのよ」

「ポポッ?」

「嫁いだ時からずっと覚悟を決めてきたつもりだったの。ルークのことは忘れるって決めてた――それなのに」

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