お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
 オリヴィアの肩が、小さく揺れる。ルークはオリヴィアの口調が切ないのに驚いた。

 今までも、『鳩』を相手にオリヴィアが自分の心情を吐露したことはあったけれど、彼女の口から零れる『ルーク』の名が、こんなにも甘く切なく響いたことはあっただろうか。

「本当なら、あなたの出入りだって禁じないといけないんだわ。でも、できそうにないわね」

 ルークとの唯一の接点。それが失われたらと思うと怖い。そう続ける彼女。今まで見せない様にしてきたオリヴィアの弱さが、次から次へと零れ落ちる。

 つん、とオリヴィアは鳩の頬をつつく。ルークは、逆にオリヴィアの手を嘴(くちばし)で突いた。

「あら、私の手は餌ではないわ。お腹が空いているのかしら? 空いているわよね? あなたが空を飛んだら、どのくらいの時間で帝国に着くのかしら」

 ルークは、伯爵家をもう出ただろうか。素敵な女性と出会ってはいないだろうか。

 次から次へとオリヴィアの口からは、ルークを想う言葉が溢れて出てくる。

(なんで、今日になってこんな饒(じょう)舌(ぜつ)な……!)

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