お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
(いえ、落ち着かざるをえなかった、が正解よね……)

 グレゴールが働かない分は、すべて家臣達とオリヴィアの肩にかかっている。お飾りの王妃とあざけられている割に、オリヴィアに回される仕事はあまりにも多い。

(ええと、関税については明日の会議で侯爵が話をまとめてくれるはず)

 この国を支えているのはオリヴィアなのだが、外に出ることを許されていない。会議など外部との連携が必要な仕事はダンメルス侯爵に任せることになっている。

「ダンメルス侯爵がいらっしゃいました」

「王妃陛下は、今日もご機嫌麗しく」

 隠す気のない殺気を放ちながら、マリカが訪問者を告げる。ダンメルス侯爵は、この三年で、ずいぶん老けてしまったようだった。

「たいして麗しくもないわね。こちらの書類、目を通したし、私の方で署名できるものはしておいたわ。それと、こちらは陛下に確認してもらって。署名するだけで問題ないとは思うけれど、その前にあなたも一度目を通した方がいいかも」

「承知いたしました」

 侍女長がそっと入ってきて、オリヴィアの机に新たな書類を積み上げる。呻(うめ)きたくなるのを、意志の力で押さえつけた。

< 154 / 306 >

この作品をシェア

pagetop