お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
 でも、一度この国の王妃となったのなら、民を見捨てていくことなんてできなかった。

「侯爵も、ずいぶん苦労なさったのでしょう? あともう少しだけ頑張りましょうよ」

「……私のせいで、王妃陛下には余計な苦労をさせてしまいました」

 膝の上に置かれた侯爵の手が震えている。

「そんなの。この国に嫁いできた時から、多少の苦労は想定していたわ。ちょっと甘かったみたいだけど」

 くすり、と笑う。

 想像していたのとはまったく違う結婚生活だった。何度もくじけそうになった。いや、今だってくじけそうになっている。

「でもね、侯爵。私はただで帰るつもりはないの」

 そう言ったら、ダンメルス侯爵は飛び上がった。そこまでひどいことをするつもりはなかったのだが。

「侯爵、せめて、この国が正常に運営できるようにあがいてみましょうよ。あなただって、国を滅ぼしたいわけではないでしょうに」

「……王妃陛下」

 侯爵は、椅子から滑り降りた。オリヴィアの前に膝をつき、頭を垂れる。それは、主(あるじ)に忠誠を誓う仕草。

「だめよ、侯爵。あなたが忠誠を誓うべきなのは、私ではないわ」

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