お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
 そう穏やかな声で割り込んだのは、ケイト・ピラールである。

 グレゴールの新しい愛人だ。商家の娘で、身分としてはさほど高くないという。庶民の間にしばしばみられる茶色の髪に緑色の瞳。

 なんでも、「聖女」としての力に目覚めたそうで、その力をグレゴールのために大いに振るっているらしい。

「もう、帰ってきています……」

「……え?」

 ケイトの微笑みが崩れた。

「羽根を怪我しているので、あまり長いこと跳べないんです。ぐるっとお城の周囲を飛んだら、すぐに戻ってきます」

「見せてくださる?」

 にっこりと微笑むケイトは美しかった。

(今までの陛下の愛人とはタイプが違うわね……)

 と、のんきにオリヴィアは思う。今までグレゴールが愛人にしてきたのは、最初の愛人であるヴェロニカに似た妖(よう)艶(えん)な雰囲気の女性が多かった。

 だが、ケイトは違う。彼女のまとう清純な雰囲気。

グレゴールより年上――つまりは、オリヴィアよりも年上である――のは今までと変わりがないのだが、彼女には母性のようなものが感じられる。

「あ、はい……? あの、連れてきてもいいですか?」

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