お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
 オリヴィアは唇を噛んだ。思っていた以上に、シェルトはよくできた子供だ――でも、ここで平和に暮らしているからこそ、オリヴィアの事情に巻き込むのを一瞬ためらった。

「私は、この国はだめになろうとしていると考えています。シェルト殿下は、どうお考えですか?」

「兄上のせいですね。国のことをまったく見ようとしないと聞いています」

「どこでそれを聞いたのかは、追求しないでおきましょう」

 シェルトの言葉に、ダンメルス侯爵は困った表情になった。たしかに、幽閉されているシェルトが、外の事情に詳しいのでは困る。いくら、人の口には戸が立てられないものだとしても。

「それで、王妃陛下はどうなさりたいのですか?」

「……私は」

 シェルトに問われたオリヴィアは、口にしかけて、首を振る。今、オリヴィアからそれを口にするのは適切ではない気がした。

「王妃陛下、先に私からよろしいでしょうか?」

 シェルトの言葉を遮るように、先代王妃が口を開いた。

「……ええ、どうぞ」

 オリヴィアの言葉に、先代王妃は居住まいを正す。オリヴィアをまっすぐに見る目に迷いはない。

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