お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
 だが、ルークがそうやってオリヴィアを守ろうとしてくれたこと、嬉しいと思ってしまうのだから単純だ。

(守られなければならないほど、弱いわけでもないけれど……)

 それでも、嬉しい。ルークがオリヴィアを気遣ってくれるのが、こんなにも嬉しい。

「黙れ! 帝国が我が国のことに口を挟むべきではない!」

「……陛下、ここまでです」

「侯爵、お前っ!」

 なおもグレゴールがわめきたてた時、静かに間に入ってきたのはダンメルス侯爵であった。グレゴールを王に押し上げたのは、ダンメルス侯爵である。だが、今の侯爵の言葉はグレゴールを見放したと宣言したも同然だった。

「オリヴィア様の扱い、イリアーヌ王国が攻め込んできても文句は言えませんぞ。陛下を支持したことを、幾度後悔したことでしょう」

 振り上げかけた拳を、どこに持って行ったらいいものか、グレゴールもわからないようだった。

「侯爵……お前、裏切ったんだな」

「陛下を最後まで支持したいと――そう考えておりましたよ」

 ダンメルス侯爵は、どこまでも静かだった。そして、彼は目を閉じる。

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