お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
『離婚いたしましょう、陛下。いえ、婚姻は最初から成立していませんでしたわね』

 耳の奥に残るのは、オリヴィアの声。

 三年の間姿を見せることのなかった彼女は、グレゴールが知る誰よりも、ケイトよりも美しかった。

 赤いドレスがよく似合っていた。黄金とダイヤモンド、ガーネットを惜しみもなく使った装身具も彼女の輝きを引き立てているようだった。

 今まで側にいた女性達とは違う力強い輝き。それは、彼女の持つ力をそのまま見せつけているようでもあった。

 ――一目で、恋をした。五年前結婚した彼女に。

 けれど、彼女はグレゴールに見向きもしなかった。投げかけられたのは、グレゴールに対してなんの感情も持っていない無表情。

 そして、暴かれていくグレゴールの罪。なにが、罪だというのだろう。

 この国は彼のもの。彼が好きにしたってかまわないはずなのに。

『グレゴールを王座から追放する』

 そう告げられた。おかしいだろう。ありえない。

 なぜ、他国の皇帝がグレゴールを追放するというのだ。

 ――笑っていた。

 オリヴィアは、あの男の隣で笑っていた。それはもう幸せそうに。

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