お飾り王妃は華麗に退場いたします～クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね？～【極上の大逆転シリーズ】

グレゴールとの結婚はなかった――そもそも成立していなかったのではあるが――それでも、他の人に嫁いでいた過去があるとちょっぴり後ろめたくなってしまう。

「半年に短縮してくれと言ったら、馬鹿を言うなと母上に言われてしまった。婚約期間にどれだけの準備をするかで、花嫁に対する愛情の深さを示さなければならない、と」

　結婚するにあたり、互いに相手への愛情をしっかり示さなくてはならないというのもまたこの国の習慣なのだそうだ。

　男性の側は、裕福ならば、手に入らない貴重な宝石を探したり、最高の屋敷を用意したり。金銭に余裕がない者は、新居の家具を手作りしたり、家事を覚えたりと別の形で愛情を示す。

　女性の側も、花嫁衣裳の刺繍を自分で施したり、男性の好きな料理を覚えたり、新郎の母と共に社交の場に出たり。互いに相手のことを知っていく重要な期間でもあるそうだ。

　そして、それは皇帝一族でも変わらないらしい。五年も待ったのだから短縮できないのかとルークは不満を隠せないでいる。

「でも、私がこの国を知る期間も必要でしょう？　ブロイラード領しか知らないんだもの」