お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
「それも、魔獣討伐の現場と、伯爵家の屋敷だけだもんな」

 帝国を訪れたことは何度もあるけれど、ブロイラード領に限定されていた。それに、観光なんてしたことはない。

グレゴールが見つかるまではそれも難しいだろうが、婚約期間の間に、この国をあちこち訪問したいとも思っている。

「悪くはないわ。そうでしょう?」

 そう宥めたのは、今日まさに神殿に赴こうとしているからだった。

 神殿と婚約式の打ち合わせがあるのである。

グレゴールが見つかっていない今、婚約式を大々的に執り行うのは難しいけれど、できるだけ婚約を早く整えたいというのがルークの意志だった。

 婚約式までの期間が延びれば伸びただけ、結婚式も後ろに回されてしまうからである。

「――中央神殿は、三百年の歴史があるのだったかしら」

「この国の建国以前からあるからな。正式にいつできたのかは神官に聞かないとわからないが」

 都から少し離れたところにある石造りの神殿は、堅固なつくりである。昔は、砦としても使っていたと聞かされれば、そう見えてくるから不思議なものだ。

「皇太子殿下、そしてオリヴィア様。お待ちしておりました」

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