お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
 近づいてきた神官は、フードを肩の後ろに払い落とした。その顔は、オリヴィアもよく知っているもの。

「……グレゴール?」

 思わず目を見張る。脱走したグレゴールが、なぜ、ここにいるのだろう。

 こちらを見る彼の目に、首の後ろがぞわっとした。

 今まで、グレゴールからこんな目で見られたことはなかった。欲情ではない。だが、彼の目にはオリヴィアを逃さないという色が浮かんでいた。

「探した。ここにいたんだな」

「探したって……私は、あなたには用はありませんよ」

 グレゴールは、なにを考えてここに来たのだろう。彼の真意がわからなくて、オリヴィアは首を傾げた。

「戻ってこい。俺にはお前が必要だ」

「……え?」

「お前が戻ってきさえすれば、俺は王になることができる。今度こそお前を、愛してやろう。お前を王妃にしてやる」

「あなた、馬鹿なの?」

 あんまりなグレゴールの言葉。出会った頃でさえ、彼からそんな言葉を期待したことはなかった。

 思わず、頭をのけぞらせて笑ってしまう。

 今さら、どの面下げてオリヴィアに復縁を求めに来たというのだろう。

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