お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
 戦うことを知らない者が相手なら大問題だが、オリヴィアは戦う術を知っている。オリヴィアの目からしたら、グレゴールの拳はあまりにも遅かった。

 さらっと交わし、ついでに足でも払ってやろうとしたその時――。

「俺の妃に手を出されては困る」

「ルーク!」

 どこから現れたのか、グレゴールの後ろに回り込んでいたのはルークだった。グレゴールの手を取ったかと思ったら、あっという間に地面に組み伏せてしまう。

「やめろ、離せ!」

 グレゴールはじたばたとするものの、ルークにかなうはずない。腕をひねられ、グレゴールは耳障りな悲鳴を上げた。

「――オリヴィア! お前は、俺の妃だろう!」

 悲鳴を上げながらも、そんな言葉を吐き出す余裕はあるらしい。オリヴィアは、彼の前に歩み寄り、膝をついた。

 ルークに組み伏せられたグレゴールは、苦痛に顔をゆがませながら、それでも懸命に顔を上げてオリヴィアを見据える。

「あなたは、私を愛さないと言った。私も、最初からあなたを愛せるとは思ってなかったわ。ルークを愛していたし、今でも愛しているから」

「最初から俺を裏切っていたのか!」

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