お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
第一章 初恋を捨てる決意と共に
「オリヴィア、そっちに行ったぞ!」

「まかせて!」

 イリアーヌ王国とアードラム帝国の国境を挟み、北に位置するウェーゼルク辺境伯爵領は、領地の西は魔の森と呼ばれる魔獣が多く出没する地域に面していた。

この地には夏になると魔獣が多数押し寄せてくる。氾濫(はんらん)した魔獣を退治するのは、辺境伯家にとっては毎年恒例の行事。そして、辺境伯家の者達は全員なんらかの役目を負うことになっている。たとえ、子供であったとしても、女性であったとしても。

 オリヴィアは魔力を集中させ、炎の壁を展開する。炎の壁に突っ込んでしまった魔獣達の悲鳴が響き渡った。

 本能的に炎を恐れた魔獣達は、進む速度を落とした。そこに打ち込まれるのは多数の矢。さらには、魔術による攻撃があとからあとへと襲いかかる。

 邪魔にならないよう束ねてある金髪が、日の光を受けて煌(きら)めく。オリヴィアの赤い目は、強い魔力を持つ証。

「追加で攻撃するわ!」

 魔獣達の動きが低下している間に、オリヴィアは新たな攻撃魔術を放つ。魔獣達の上に氷の槍が降りかかった。

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