お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
 アードラム帝国では、皇帝一族に連なる者は、貴族達の前で婚約したことを発表してから一年の準備期間が設けられるのが通例だ。

 オリヴィアが、帝国に来てひと月。今日はルークとの婚約式なのである。

 ストラナ王国で、シェルトの即位式の準備をしながらも、ルークはしっかり帝国と使者のやり取りをしていたらしい。

 オリヴィアが帝国に到着した時には、山のような布が用意され、婚約式のドレスはどれを使って仕立てるのだと、ふたりで長時間悩んで決めた。

 ルークが選んだのは、黒であった。普通、婚約式に黒はまとわないだろうと思うのだが、どうしてもルークはルークの色を使いたかったそうだ。その独占欲を嬉しいと思ってしまうのだから、オリヴィアもたいがいなのかもしれない。

 とはいえ、めでたい席なので喪に服す黒ではなく、選ばれたのは華やかな黒であった。金糸を織り込み、キラキラと輝く黒。

スカート部分には、金のレースが重ねられている。上半身には大きな装飾は施されていないのだが、グレゴールの断罪の場にも身に着けたガーネットとダイヤモンドの装身具が輝きを添えている。

< 303 / 306 >

この作品をシェア

pagetop