お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
 城壁の上から襲いくる魔術の前になす術もなく、魔獣達は槍に貫かれ、動けなくなっていく。それでもなお、仲間達の死体を乗り越え、前方に進もうとする魔獣の群れ。この時期の魔獣達は、正常な判断力を失っているのだ。

 突撃していった一団が、障害物を乗り越えてきた魔獣達を次から次へと切り倒していく。 ――そして。日が暮れようとする頃。

 魔獣達の侵攻がぴたりと止まる。森の奥へと引き上げていく魔獣達。

正常な判断力を失ってはいるが、この時期の魔獣は、日が暮れる頃には巣穴に戻る。人間の側は、一息つく時間を与えられるということになる。

「終わったぞ!」

「怪我人を回収しろ!」

「日が暮れる前に、全員撤収! 負傷者と死亡者を報告!」

 隊長達がてきぱきと指示を出すのを耳にしながら、オリヴィアははっと息を吐きだした。

(お父様、お兄様達は無事かしら……?)

 魔獣討伐に追われるのは毎年恒例になっているとはいえ、いつだって家族の無事を祈らずにはいられない。

 オリヴィアがハンカチを取り出し額(ひたい)の汗をぬぐうと、横からさっと冷たい水が差し出された。

「ありがとう、マリカ」

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