お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
エーリッヒはオリヴィアの肩を叩き――アントンは、オリヴィアの手を握りしめたまま放そうとはしない。
「本当は、姉上はルークと結婚するはずだったのに」
それは、つい零れた本音。けれど、オリヴィアの胸をあまりにも深く突き刺した。
「アントン、お前な――」
「いいの、お兄様。私だって、そう思ってるんだから」
今年の魔獣討伐は終わっただろうと判断されたのは三日前のこと。例年ならすぐに国に帰るルークはまだ滞在していたけれど、見送りには出てこなかった。
(もう、お別れはすませたもの)
ルークがいるであろう客室の方に目を向ける。カーテンをぴたりと閉ざしたその部屋は、オリヴィアの出立を見送りたくないという彼の意思表示のようにも思えた。
つい先日まで、黒玉の指輪がはめられていた左手中指に視線を落とす。あの重みが失われた今はすごく心細い。
「ルークには、もうお別れはしたわ。私は、私の道を切り開いてみる。ルークには、ルークの幸せを掴んでほしいの」
それは嘘ではなかったけれど、真実でもなかった。
ルークの隣に、他の女性がいる未来なんて考えたくもない。
「本当は、姉上はルークと結婚するはずだったのに」
それは、つい零れた本音。けれど、オリヴィアの胸をあまりにも深く突き刺した。
「アントン、お前な――」
「いいの、お兄様。私だって、そう思ってるんだから」
今年の魔獣討伐は終わっただろうと判断されたのは三日前のこと。例年ならすぐに国に帰るルークはまだ滞在していたけれど、見送りには出てこなかった。
(もう、お別れはすませたもの)
ルークがいるであろう客室の方に目を向ける。カーテンをぴたりと閉ざしたその部屋は、オリヴィアの出立を見送りたくないという彼の意思表示のようにも思えた。
つい先日まで、黒玉の指輪がはめられていた左手中指に視線を落とす。あの重みが失われた今はすごく心細い。
「ルークには、もうお別れはしたわ。私は、私の道を切り開いてみる。ルークには、ルークの幸せを掴んでほしいの」
それは嘘ではなかったけれど、真実でもなかった。
ルークの隣に、他の女性がいる未来なんて考えたくもない。