お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
 思いきりよく腹をくくる。

 乗り心地のいい馬車の中で侍女達とおしゃべりをしたり、持ち込んだ書物でストラナ王国の歴史や貴族達について学んだりしていれば、五日という時間もあっという間だった。

「ついに、来てしまったわね」

 王国からの持参金を運んでいる一行と合流し、今日はストラナ王国との国境を越えることになっている。

 今日は、朝から侍女ふたりが張りきってオリヴィアを美しく装わせた。

 黄色の地に、金糸と銀糸、さらには多数の真珠を使った刺繍を施したドレス。襟ぐりや袖口、裾にあしらわれているレースもまた最高級の品であった。

 オリヴィアが馬車から地面に降り立つその動きだけで、ドレスは複雑な陰影を描き出す。

 ウェーゼルク辺境伯家は、当代に限り王族に準じる立場である――その威光を存分に輝かせる装いだ。髪を飾るのは、金の針金に多数の真珠を編み込んだ髪飾り。装身具は、ずっしりとした黄金の台座に真珠とダイヤモンドをあしらったものだ。

 国境を越えた先で待っていたのは、ストラナ王国の迎えの者達であった。

「お待ちしておりました。オリヴィア・ウェーゼルク辺境伯令嬢」

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