お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
 先頭で丁寧に頭を下げたのは、五十代と思われる男性であった。

 上質の衣服で身を包んでいる。半分白くなった髪は、彼の苦労を物語っているようであった。茶色の目がオリヴィアに向けられたかと思ったらさっと伏せられる。

「ダンメルス侯爵――でしたか?」

 衣装の効果を認識しながら、オリヴィアはにっこりと微笑んだ。

「さようでございます――王妃陛下」

 ダンメルス侯爵。グレゴールと先代の王妃の間で王位継承争いが起こった時、貴族達をまとめてグレゴールを勝利に導いたのが彼だ。

 ウェーゼルク辺境伯家の間諜達に調べてもらったところ、公正な人柄だそうだ。グレゴールに味方したのは、長子が継ぐべきだという思いがあったかららしい。

 グレゴールも、侯爵を頼りにしているらしいとは聞いている。

「まだ、王妃ではないわ。ええと、侯爵に持参金の目録をお渡しして。お約束通り、ここからは侍女ふたりだけを伴ってまいります」

「侍女は五人までお連れになってもよろしかったのですが……?」

 ダンメルス侯爵は、オリヴィアが連れてきた侍女の数が、あまりにも少ないのに驚いたようだった。

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