お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
「オリヴィア様の侍女ですから、当然でございます」

 マリカは、オリヴィアの専属侍女だ。護衛も兼ねているため、こうして戦いの場にも同行する。彼女に任せておけば、オリヴィアの護衛も問題ないというのが周囲の見解だ。

「エリサは?」

「妹は、治療の手伝いに向かいました」

「では、私もそちらに」

「かしこまりました」

 マリカを従えたオリヴィアが歩みを進めると、周囲の人達が道をあけ、頭を下げてくる。

 オリヴィアを見た時、一番印象的なのは豪奢な金の髪だろう。背中に流したままのそれは、緩やかに波打ち、通り過ぎた者は誰でも一瞬目を奪われる。背は高く、ピンと背筋が伸びた姿は貴族令嬢のお手本のよう。

 吊りがちの目、通った鼻筋、形のよい唇が、卵型の頬の中にバランスよく配置されている。あまりにも完璧な造形は、一見彼女を人形めいて見せるのだが、表情の豊かさがすぐにその印象を覆す。

 強い光を宿す赤い目も冷たい面を印象付けがちなのだが、底には温かな光があることを親しい者達は知っている。

 十五歳とは思えないほど、完璧な貴族。それがオリヴィアであった。

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