お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
 母の花嫁衣裳を、オリヴィアの身体に合うように補正するのは、本当に忙しない作業だった。城中の針子がそのために駆り出されたと言っても過言ではない。

 裾を長く引くスカートには、さらに刺繍が増やされ、真珠や水晶が縫い留められた。胸のあたりにはレースを追加。手首には、ぐるりと水晶が縫い付けられている。

 仮縫いで身にまとってみた時、その重さに驚いたことを思い出した。その重みが、そのままオリヴィアの責任の重さのようにも感じられて引き締まる思いだったことも。

「できました……本当に、お美しい……」

 唇に紅を乗せて化粧を終えたマリカが声を震わせる。エリサも、胸がいっぱいな様子だった。

 ベールを顔の前に下ろし、マリカの手を借りて歩き始める。行き先は、挙式の執り行われる王宮内の神殿だ。

「陛下は、中でお待ちでございます」

 父親役はいないから、この結婚を取りまとめる中心となったダンメルス侯爵が、オリヴィアをグレゴールのところまで導いてくれた。

 オリヴィアの前に立った少年少女が、籠から花弁をまき散らす。どこからともなく聞こえてくる荘厳な音楽。

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