お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
(とうとう、結婚してしまうのね……)

 緊張感で、背中が強張る。

 辺境伯家の娘であるから、それなりに人の前に立つことはあったけれど、こんなにも様々な種類の視線にさらされることはなかったような気がする。国元では、オリヴィアはあくまでも敬われる立場でしかなかった。

 だが、ここに来てからは違う。オリヴィアを歓迎する目、歓迎しない目、オリヴィアから情報を引き出そうと企む目――。

 ベールで顔が隠れていて、本当によかったと思う。

(あの方が、グレゴール陛下)

 オリヴィアの結婚相手は、神官の前で立っていた。

 白を基調とした正装。すらりと背が高いが、まだ十五歳であることを示しているかのように身体の線は細い。ほっそりとした肩に、華奢な腰。

 ベール越しでは、彼がどんな表情をしているのかまではわからなかった。

「それでは、結婚の儀を執り行います」

 グレゴールの隣にオリヴィアが並ぶと、いよいよ儀式が始まる。神官がふたりを祝福し、この国が明るい未来に包まれることを願う。

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