お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
 オリヴィアの方から声をかけるものの、まったく聞く耳を持ってくれない。これは、前途多難どころではないかもしれない。

 初夜のために部屋に引き上げたところで、ついため息をついてしまった。侍女達は、心配そうな目を向けてきた。

「どうかなさいました?」

「前途多難だわ。まさか、あそこまで睨まれるとは思ってもいなかったから」

 昼間まとった花嫁衣裳にしても、披露宴のためにまとったドレスにしても、ずっしりと重い。ドレスを脱いで身軽になったら、またため息が出た。

「あの男がなにかやりましたか? 必要でしたらさくっと殺って」

「マリカ、落ち着きましょう。まだ、なにもされていないから」

 披露宴の様子をふたりが知らないのが幸いだった。あの状況を見られていたら、ふたりそろって真面目に暗殺を企てかねない。

 二人とも、どうにもこうにも血の気が多いと言うか、対象を『消し』てしまえばよしと判断することが多すぎる。

「とりあえず、着替えて寝室に行くわよ。ダンメルス侯爵から場所は聞いているでしょう?」

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