お飾り王妃は華麗に退場いたします～クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね？～【極上の大逆転シリーズ】

　ウェーゼルク辺境伯家に仕える兵士達は、全員が一騎当千の勇士と言っても過言ではない。だが、ここは魔獣が生息する地。いくら勇猛果敢とはいえ、魔獣討伐の際に怪我人が皆無というわけにはいかないのだ。

「お嬢様に手当てしていただけるなんて」

「軽症者の手当ては私がすれば、他の人達は重傷者に専念できるでしょう？」

　回復魔術を使える者は、さほど多くはない。そして、オリヴィアはその数少ない使い手でもあった。

　傷口に手をかざし、魔力を集中させる。みるみる傷は塞がり、新たな皮膚がそこを覆った。だが、オリヴィアは回復魔術の専門家ではない。どの系統の魔術もそれなりに使いこなすが、魔力の質が一番向いているのは、火系統の魔術なのだ。

「もっと重傷の人も治せればいいのに」

「そもそも回復魔術の使い手が多くはないのですよ。お嬢様が手を貸してくださるだけで、他の者の負担がずいぶん少なくなるのです」

　もっと強力な回復魔術を使うことができれば、もっと皆の手助けをすることができるのに。だが、回復魔術を真面目に勉強しようと思えば、攻撃魔術の勉強に割く時間が減ってしまう。