お飾り王妃は華麗に退場いたします～クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね？～【極上の大逆転シリーズ】

　もともとは、国王の愛人が暮らしていた建物だそうだ。

　愛人といっても出世欲に目がくらんでいたわけではなく、自分は日陰の身であると認識する女性だったようだ。華やかな場への出席は好まず、高価な宝石を国王にねだることもなく。

　ただ、この離宮に通ってくる王の愛だけを信じて、ひっそりと暮らしていたらしい。

　もともとはさほど身分の高くない家の出だったらしく、自分で最低限の家事もこなしていたようだ。

　国王を迎えるために、料理や菓子を作ってもてなし、その家庭的な雰囲気に国王は癒されていたのだとか。彼女が亡くなった時、国王から与えられていた手当てはほとんど手付かずだったとも聞く。

「きちんと、身分をわきまえた方だったようですよ」

　と、王の愛人のことを年かさの侍女――彼女が侍女長だそうだ――は語る。

　どうやら、オリヴィアにも自分の立場はきちんとわきまえておけと言いたいらしい。

　相手が、隣国の王族に近い立場であるということもすっかり彼女の頭からは飛んでいるようだ。