お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
 侍女ふたりの分も運ばれてきたけれど、そちらはもっと悲惨だった。パンはついていたものの、スープにはしなしなの野菜すら浮かんでいない。具なしだ。

「ですが、オリヴィア様!」

「黙って食べるの。たぶん、昼食も夕食も同じようなものが出てくると思う――下手をしたら、食事は出してもらえないかもね。エリサ、昼の間に、こっそり外でなにか調達してきてちょうだい」

「かしこまりました」

 マリカに行ってもらってもいいのだが、護衛任務ならマリカの方が得意としている。

 エリサは話術が得意だから、万が一抜け出したところを見つかったとしても、上手に言い訳してくれるだろう。

「食べ物は無駄にしてはいけないものね……とはいえ、我が家の軍事食の方がはるかにましじゃないかしらね」

 指先でパンをつつく。

 魔獣の繁殖期には、食事をする間も惜しんで魔獣の相手に駆け回ることになる。料理に時間をかけられないから、大鍋でどんと煮込んだスープとパンが定番だ。

 ウェーゼルク辺境伯家では、力が出るようにと肉もたっぷり入っていたし、量もたっぷりあった。ここでの食事とは雲泥の差だ。

< 75 / 306 >

この作品をシェア

pagetop