お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
 オリヴィアの火魔術は強力なため、そちらを優先するようにというのが父と話して決めたことだ。

(……でも)

 わかってはいるけれど、もっと力を、と望んでしまうのは贅沢だろうか。もっともっと皆の役に立ちたい、と。

あれだけ続けて攻撃魔術を放ったあと、けろりとして治療に回るだけの魔力を持つのがそもそも普通ではないのだが、オリヴィアとしてはまだまだ研鑽を積むべきだと思っている。

「三名、死亡しました」

「……そう。お葬式をしなくてはね」

 戦いがあれば、怪我人だけではなく死者が出るのもまた当然。

 亡くなった者達の遺族には十分な補償をしてやらなくてはいけないけれど、そこは父と兄達に任せておけば大丈夫。

 軽傷者の治療を終えてオリヴィアは立ち上がった。こぼれるのは、小さなため息。

「……鍛えても、こればかりはどうしようもないわね」

 どれだけ訓練を重ねて鍛えたとしても、死者がゼロになることはない。

(……わかってはいるけれど)

 立ち上がった時には、オリヴィアの顔から悲痛な表情は消えている。

 動揺したところを、家臣達の前で見せるわけにはいかないから。



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