お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
 今日選んだ戦装束は、国から持参したドレスである。夜が明ける頃の海のような神秘的な色合いのドレス。

 キラキラと輝くビーズがびっしりと縫い付けられているドレスは、身体を動かす度にビーズが触れ合ってしゃらしゃらと澄んだ音を立て、光を反射して煌めく。

 これがどれだけ手のかかっている品なのか、客人である侍女長は見抜くことができるはず。

(……圧倒されているようね)

 オリヴィアの期待した通り、侍女長はドレスから目を離すことができないようだった。

 動きやすい服を好むオリヴィアだが、きちんと装うことも知っている。今は、侍女長に、オリヴィアの家が持つ財力と権力をわかりやすく伝えるためにこうして装った。

 ウェーゼルク辺境伯家は、魔獣から採れる素材で、かなり裕福なのである。

「王妃にあてられる予算は、どうなっているのかしら?」

 侍女長が目を離せないのを意識しながらオリヴィアはゆっくりと腰を下ろす。オリヴィアの背後に素早くマリカとエリサがついた。

 オリヴィア越しに視線で侍女長を威圧している。ふたりに睨まれ、侍女長は身を小さくした。

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