お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
「王妃様の予算は、すべて王妃様のために使われております」

 はっ、とオリヴィアは侍女長の言葉を鼻で笑って受け流した。手にした扇で、ひらりと仰ぐ。

「野菜しか入っていないスープと、硬くなったパンしか出してもらえないほど、王妃の予算は少ないのかしら? それも昨日からは運ばれてきていないのだけれど」

「ま、まさか、そのようなことは! もちろん、きちんとしたお食事――きゃあっ!」

 閉じた扇で、テーブル越しにぴしゃりと侍女長の肩を叩く。本気で殴ったわけではないので痛くはないだろうが、驚いたには違いない。

「ふざけないで。私が、なにも知らないとでも? マリカ」

「はい、こちら。侍女長の部屋に隠されていたものでございます」

 マリカが取り出したのは、宝石箱であった。蓋を開けば、見事な宝石がいくつも収められている。

「あら、まあ……見事な宝石だこと。王妃にふさわしい品ね」

「なんですか、私の部屋に勝手に入って持ち出したというのですか!」

「あら、だってこの宝石、私の嫁入り道具よ?」

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