お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
 その日の夜。

 侍女達も下がらせたオリヴィアは、城壁へと出た。

(――わかっている。限りがあるということは)

 ウェーゼルク辺境伯家がこの地を預かるようになったのは、百年前のこと。それ以来、隣接する魔の森から国内へと魔獣の侵入を許したことはない。

 この地で魔獣討伐にあたる軍人達は士気が高く、国を守ることに誇りを持っている。たとえ、命尽き果てたところで後悔はしないのだろう。

 辺境伯家の者として、魔獣討伐の際にはオリヴィアも戦場に立つ。豊富な魔力と、完璧な魔術の制御で、この地にできる限りの貢献をしている。

 ――だけど。

 魔獣の討伐が終わった夜には、こうして外に出てこずにはいられない。

 目を伏せ、死者への祈りをささげていると、夜風がオリヴィアの髪を揺らした。

「オリヴィア、ここにいたのか」

 祈りを終えるのを見計らっていたかのように、続いて城壁にやってきたのはルーク・ブロイラード。隣接している領地を持つブロイラード伯爵家の三男である。

 ブロイラード家はアードラム帝国に属していて、領地の間には国境があるのだが、両家の間には親しい付き合いが続いていた。

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