春送り〜藩医の養父と娘の禁断愛〜
ナガサキでの生活が四年目に入り、わたしが十三の歳になる頃のこと。
いつも決まった刻に目が覚めるのに、その日は寝過ごした。代わりに下腹部の違和感に気づいて、ひどく動揺した。
隣に敷いている布団に七さんの姿がないのを確認してから、震える手で自分の布団をめくった。
身体の異変を探るように着物の下に手を入れる。太ももの内側がぬるりと滑り、着物から手を引き抜いて指先を見る。
わたしは涙目になって衝立の向こうへと走り、へっついの前で朝げを作る七さんを呼んだ。
「七さん……」
「ど、どうしたお春。なに泣いて」
七さんは目を瞬いて、急いだ様子でわたしのそばに来てくれる。
ためらうことなくわたしの涙をぬぐう指先。安らぎを与えてくれる手のひらに、わたしは頬をすり寄せた。
「七さん……わたし……」
状況を伝えたいのに、声が震えて仕方がない。
「ひっぐ……わたし、病気なのかな。死んじゃうのかな……?」
「なに縁起でもねぇことを。嫌な夢でも見たのか?」
「ち、違う……血が……血が出てるの」
「血?」
わたしが血に汚れた手を見せると、とたんに、七さんの表情が真剣なものに変わった。
「いったいどこだ」
「わ、わかんない。怖くて確かめられなかった。でも脚についてる。お尻の方もなんだか濡れている気がして……怖い……わたし、死んじゃう?」
いつも決まった刻に目が覚めるのに、その日は寝過ごした。代わりに下腹部の違和感に気づいて、ひどく動揺した。
隣に敷いている布団に七さんの姿がないのを確認してから、震える手で自分の布団をめくった。
身体の異変を探るように着物の下に手を入れる。太ももの内側がぬるりと滑り、着物から手を引き抜いて指先を見る。
わたしは涙目になって衝立の向こうへと走り、へっついの前で朝げを作る七さんを呼んだ。
「七さん……」
「ど、どうしたお春。なに泣いて」
七さんは目を瞬いて、急いだ様子でわたしのそばに来てくれる。
ためらうことなくわたしの涙をぬぐう指先。安らぎを与えてくれる手のひらに、わたしは頬をすり寄せた。
「七さん……わたし……」
状況を伝えたいのに、声が震えて仕方がない。
「ひっぐ……わたし、病気なのかな。死んじゃうのかな……?」
「なに縁起でもねぇことを。嫌な夢でも見たのか?」
「ち、違う……血が……血が出てるの」
「血?」
わたしが血に汚れた手を見せると、とたんに、七さんの表情が真剣なものに変わった。
「いったいどこだ」
「わ、わかんない。怖くて確かめられなかった。でも脚についてる。お尻の方もなんだか濡れている気がして……怖い……わたし、死んじゃう?」