聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
* * *
「とにかく今日は休め。事情は明日話す」
王子様のような男はそう言って、三千花を豪華な部屋に連れて行った。
ヨーロッパの貴族みたいな部屋だった。
最初に入った部屋が居間で、続き部屋が寝室だった。寝室には居間との出入り口しかなかった。
彼女は連れて行かれた寝室をキョロキョロと見回した。こんなに広い部屋にベッドだけが置かれていて、そのベッドがまた豪華だった。金色の装飾がついた天蓋があり、薄い白い布が垂れ下がっている。
「君のために用意させた。足りないものがあればこの者に言ってくれ。特別対応で彼女は隣室に常に控えるようにさせるから」
「へっ」
どういうこと、と王子様を振り返る。イケメン王子様はにっこり笑った。
あまりにいい笑顔だったので、一瞬見とれた。
いかん、この人は痴漢だから。
ドキドキしそうになる自分に言い聞かせる。
王子様の後ろには赤茶の髪の若い女性が控えていた。10代後半のように見えた。
彼女は目が合うとペコリと頭を下げた。
「ここは安全だ。ドアの外には護衛の兵士がいるし、外には獰猛な犬がいて侵入者を寄せ付けない」
王子様は優しく言う。
つまり、逃げることはできないということだ、と三千花は思った。
「本当は、今すぐ俺のものにしたい」
王子様は三千花の頬に手を当てた。
彼女は顔を引きつらせた。
王子様はそれを見て悲しそうに微笑し、彼女をベッドに押し倒した。
と思ったらキスで口を塞がれた。