聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
「お触り禁止ですよ〜」
 にこにこしながら晴湖がその手を外す。三千花もそれにならった。

「聖母様方はつれなくてらっしゃる」
 ユレンディールが肩をすくめた。

「今は流刑は行われていませんよ。昔の話です」
 リグロットが言う。
 今は罪状によっては魔法の封印をするが、流刑はしてないという。

 封印するための魔法陣も一緒に展示されていた。
 壁一面に大きく張られた布に描かれたそれは、あえて完成形ではないものが展示されている。真似して悪用する人が出ないように、とのことだった。

 かつてはこのような大きなものばかりだったが、現在は小型化している。だが、昔の名残で小型化したものも「陣」と呼んでいるとのことだった。改良されたもの、小型化したものは悪用防止のために展示されていない。

 今はハガキ程度の紙に描かれた魔法陣でもそれを貼り付ければ魔法を封じられるという。主に犯罪者の逮捕に使われ、作成は神殿でしかできない。管理は神殿で厳重に行われている。

 よほどの重罪の場合は一生の魔法を禁じられるが、その際には入れ墨で魔法陣が消えないようにする。

「でもそれで異世界の聖母をよく思っていない人もいるのね」
 晴湖の言葉を、リグロットは肯定した。

「そうです。そして転移の魔法は、送還と召喚はできても、基本的にあちらから人の意志で来ることは不可能です。あちらの方は魔力がありませんからね。送還・召喚にしても、普通は単独で行うことはできません。ですからそれができるアルウィード殿下はすごいのですよ」

「前にもそう言われたけど、ピンと来ない」
 三千花は一般的な人の魔法の限界を知らない。アルウィードとリグロット以外が魔法を使う姿を見たことがない。

「アルウィード殿下を上回るのは第一王子のレオルーク殿下くらいかな」
 ユレンディールが付け加える。

「あなたは異世界へは行けないの?」
 けっこう魔力があるアピールをされた覚えがあったので、聞いてみる。
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