聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
別のコーナーに行ったときのことだった。
「銃がある」
三千花は少し驚いた。魔法の世界と銃がうまく頭で結びつかない。
「今は美術館や博物館などで展示されるレベルの過去の遺物ですよ」
リグロットが説明した。
「へえ、そうなんだ」
いま目の前に展示されている銃はリボルバーで、機能性より装飾性が重視されていた。銀色の銃身に金の飾りが象嵌されていた。持ちにくそうだし、本当に撃てるのか疑ってしまう。
「大砲とかもないの?」
火薬があるならばそれらも作られていそうだ。
「ざっくり言うと、過去の王族ががんばって世論誘導して銃も大砲もなくしたらしいですよ。他国とも協力して、持たない国際協定が作られています。今ではあんな野蛮な武器を持っていた時代があったんだね、と言われるくらいに時代遅れの武器です」
ユレンディールが続けて説明した。
「へえ、なんかすごい」
彼は簡単に説明しているが、実際にはそんな簡単なことではなかったはずだ。
考えながら見ていたので、リグロットが一歩下がって場所を開けたことに三千花は気づかなかった。
「そのかわりに、攻撃魔法が発展した。君の世界のような大量破壊兵器がないのが救いだ。魔法同士の戦いだと個人戦が基本になる」
説明する声は聞き慣れたものだったので、声の主を気にしなかった。
「へえ、そうなんだ」
「国家間で魔法の軍事利用に関しての協定もある」
「なんかすごい詳しいね」
「勉強したからに決まってるだろう」
上から目線の発言に既視感があって振り返る。
目の前にアルウィードの顔があった。
「うあああああ!」
三千花はのけぞって転びそうになる。
アルウィードがサッと手を伸ばして彼女を支えた。
「人を見て驚くなんて失礼な」
「だって、さっきまでいなかったし!」