聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
アルウィードは結局、手をつなぐことで妥協してくれた。
だが、三千花には充分に恥ずかしい。しかもそれが人生初の恋人つなぎだなんて!
気を使ってなのか、晴湖はユレンディールと積極的に会話をしていた。
「ここの明かりはどうなってるの?」
「魔石を使っているのですよ」
「魔石って何?」
「魔力のこもった石で、天然のものですよ。それを使うと明かりを灯したり、水を浄化したり、魔法道具の動力になったり、いろんなことができます。上下水道も魔石のおかげでかなり発達しました」
「魔物とか出ないの?」
「昔はいたらしいですけどね。今はいないですね」
「絶滅しちゃったんだ?」
「かもしれないですね」
二人の会話が聞こえてくる。
三千花とアルウィードは無言だった。
アルウィードが優しく微笑を向けてくるが、三千花は紅潮した顔を見られたくなくてうつむいている。
「銃はあったのに車も汽車もないんだ?」
晴湖が不思議そうに聞く。
そういえば、と三千花も思う。
「車ってなんですか? 汽車とは?」
ユレンディールが聞き返す。
「人が乗る乗り物だ。車は馬車の車体と同程度の大きさだが、背が低く早い。汽車はとても大きいが、ものすごく早い」
アルウィードが答えた。
「そうそう、だいたいそんな感じ」
晴湖が言った。
「車も汽車もないなんて、変な感じ」
三千花が言うと、アルウィードは目を細めた。
「人様の文明を変だなんて失礼な。魔法や魔石という大きな違いがあるのに、同じような文明の発達をするほうがおかしいだろう」
「そうかもしれないけど……」
「そんなことより、結婚式のウエディングドレスを考えたらどうだ」
「は!?」
「あらー、式には呼んでもらえるのかしら」
「ぜひ」
アルウィードは晴湖ににっこりと笑いかける。
勘弁して、と三千花はうなだれた。