聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜





 ファリエルタから手紙が来たのは博物館に行った翌日、昼食のときだった。
 給仕に配られたパンを割ったら中に手紙が入っていた。

 礼儀作法の先生にもエミュリーにも見つからないように、すぐに袖の中に隠す。
 給仕を見るが、すました顔をしていて表情が読めなかった。

「いかがされました?」
 礼儀作法の先生が聞いてくる。

「何でもないです」
 人がいなくなったときを見計らってその手紙を見た。

『今夜一二時に王宮の横の神殿に来て下さい。見張りはなんとかします。あちらの世界へお送りします』

 心臓がバクバクした。手紙を持つ手が震える。
 急な話すぎて、冷静になれない。

 晴湖とシェリナにも伝えなくちゃ。でもどうやって。

 見張られている上にどの部屋にいるのか知らないから、直接会いに行くことはできない。
 誰かに手紙を預けたところできちんと届けてもらえるとは思えないし、中を検閲されたら終わりだ。

 そもそもあの二人は帰りたいのだろうか。
 シェリナには完全否定されたし、晴湖もこの世界を楽しんでいるように思える。
 それでも知らせるだけ知らせた方が……。
 三千花はその方法を考える。

 良い方法が思いつかないまま、夜を迎えた。


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